日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

地点「チェンチ一族」(アルトー作、三浦基演出)

演劇計画2008 計画I リーディング公演「チェンチ一族」
作:アントナン・アルトー(Antonin Artaud)
引用:アントナン・アルトー「神の裁きと決別するために」
演出:三浦基
翻訳・ドラマトゥルク:宇野邦一
出演:小林洋平/石田大/安部聡子/谷弘恵/大庭裕介/河野早紀
日時:2008年12月13日、14日
四条烏丸 京都芸術センター・フリースペース
チケット:全自由 前売・当日共1000円 「小説家 裘甫 ( クボ ) 氏と京城の人々」との共通券1500円
主催:京都芸術センター 演劇計画2008

アルトーが、「残酷演劇」として演劇の実験を試みていた時期(1930年代)に、その実例として書いた戯曲である。イタリア・ルネサンス期に実際に起きた事件をもとにしたものだが、アルトー以前に、シェリーやスタンダールがこれを取り上げて作品化している。父と娘の近親相姦が中心になっており、アルトーの過激な演劇概念に照らすなら、一見、古典悲劇的な感触も受けるが、これが「残酷演劇」として舞台化された唯一の劇作であり、そこから何が取り出せるかはまだ未知数である。アルトーに触発された寺山修司が上演を試みたことがある。(宇野邦一


フランスでは演劇のもっとも重要な要素として、台詞の音楽性(musicalite)ということがよくいわれる。音楽性というのは決してなにかメロディアスなものを指していうのではなく、語りであるとか主張といったものが、秩序ある文体になったときに指摘されることのように思われる。
アルトーを考えたとき、彼の音楽性は狂気やアナーキズムによってつくられているように思う。無秩序によって秩序が形成され、文体となっているわけだが、私は彼の文体そのものというよりも、アルトーが演劇に興味をもったということに惹かれるのだ。『チェンチ一族』には、史実をモチーフに演劇の古典的テーマとも言える近親相姦が描かれているが、演劇の根本はタブーを提示し、そのことによって秩序を疑うことであったということを、アルトーを通して私は再び気づかせられる。本企画を通して、演劇の姿、発語の根拠について考えたいというのが私のいまの思いである。(三浦基)