【主催講演会情報】上映会『真昼に分かつ』(渡邊守章 訳・演出)
・日時:3月24日(日)13時~17時
・会場:アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ
・入場料:一般1,000円、会員・学生無料
(12時30分より整理券を配布します)
『真昼に分かつ』(Partage de midi)は、ポール・クローデルが1906年(第一稿。ほかに1949年に発表された上演用の第二稿がある)に発表した戯曲で、詩人が体験した中国での人妻との禁じられた恋をモチーフにした、クローデル中期の代表作である。美しい人妻イゼを軸に、彼女に思いを寄せる若者メザ、アマルリック、ド・シーズが宇宙的な力に衝き動かされ、それぞれの情念をぶつけ合う。
今回上映されるのは、渡邊守章の第一稿の訳、演出による舞台の映像記録で、1988年にPARCO劇場で上演されたものである。
主役の人妻イゼを演じるのは、『フェードル』(演劇集団円)でタイトル・ロールを演じた後藤加代で、クローデル独特の息の長い韻文による詩句を日本語にした渡邊守章の濃密な台詞を、見事に声に移し替えている。
イゼをめぐる男たちを演じるのは、佐古正人、有川博、勝部演之。
通路のような舞台を観客席が囲む客席貫通型の舞台装置は斬新な試みであり、19世紀末のインド洋上の豪華客船のデッキから始まり、最後は叛乱に揺れる中国南部の港町で終わるこの物語の動的な部分を支える役割も果たしている。
訳・演出の渡邊守章氏を講師に迎え、お話を聞きながら全篇を上映することで、このスケールの大きな舞台の全貌を明らかにするとともに、クローデルの劇的世界に深く足を踏み入れる。
渡邊守章(1933-)
フランス文学者、演出家、東京大学名誉教授、前京都造形芸術大学舞台芸術センター所長。
クローデル、マラルメ、ジュネなどを中心とした、19世紀から20世紀にかけてのフランス詩、演劇の専門家として知られる。ミシュル・フーコーの日本への紹介者でもある。ラシーヌ、バルト、クローデルなどの翻訳で毎日出版文化賞、読売文学賞を受賞。2018年にシュヴァリエ勲章。
著書に『ポール・クローデル 劇的想像力の世界』、『虚構の身体』、『劇場の思考』、『演劇とは何か』、『越境する伝統』など。訳書に『マラルメ詩集』、『繻子の靴』、『ロレンザッチョ』、『シラノ・ド・ベルジュラック』、『ラシーヌ論』、『性の歴史Ⅰ』など多数。また、演劇集団円や観世寿夫と結成した「冥の会」の活動を通じて、演出家としても活動し、これまで『フェードル』、『女中たち』、『ロレンザッチョ』、『天守物語』、『繻子の靴』、そして今回の『真昼に分かつ』など、ジャンルを超えた幅広い舞台の演出を手掛けている。