日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

『DUNAS ードゥナスー』

http://my.bunkamura.co.jp/ticket/ProgramDetail/index/2531
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/18_dunas/
演出・振付:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ
出演:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ ミュージシャン7名
日時:2018年3月29日 (木)  〜  2018年3月31日 (土)
会場:オーチャードホール
上演時間:約80分(休憩なし)

突風に乗って、遠くかの地から吹き付ける熱い砂塵。白く煙ったこの世界で、ふと思い出す。灼熱の砂丘を踏みしめ、この地を目指した先人たちの想いを。
現代フラメンコを代表する舞踊家マリア・パヘスが、コンテンポラリーダンスの鬼才シディ・ラルビ・シェルカウイと共に創り出す世界は、ミステリアスな美しさに満ちている。
北インド地方からアラブ諸国を通り、北アフリカを西に向かって、スペインの南端、アンダルシア地方にたどり着いたジプシーたち。彼らが、訪れた土地で吸収し何世紀もかけて育んできた文化が、後にスペインのそれと融合し、生まれたのがフラメンコだった。
パヘスは、そのフラメンコの原点を、そしてモロッコ人の父を持つシェルカウイは、彼自身の核を、砂丘の神秘―ドゥナス―の中に見出す。
しかし、フラメンコとコンテンポラリーダンスという、まったく違ったジャンルの舞踊を融合させることが、彼らの目的では決してなかった。
パヘスにはフラメンコに対する確固とした信念がある。彼女はどんな音楽でも、シチュエーションでも、フラメンコの動きやリズムを逸脱することはない。またシェルカウイも、自身の踊りを守る。既成の動きに捕らわれることのない、魂の自由は、決して損なわない。
この作品で彼らがやりたかったこと。それは、それぞれの想いを共有することに他ならなかった。
体の奥底に眠る、自分とは何かを知りたいという欲求。それは人間ならだれでも持つ感情。だからこそ、それを観る私たちも、異国の風景でありながらも、自分と共通する何かを、心臓の奥深くに感じることができる。
同じ想いを胸に秘めた彼らが出会い、この作品を作りだしたことは、まさに必然だった。そうして彼らの原風景は、ステージの上で壮大なスペクタクルとなった。
かつてのエンターテイメント性に満ちたパヘス作品を知るオーディエンスは、アーティスティックな魅力が加わった今回の作品で、彼女のさらなる進化を感じることだろう。惚れ直すとは、まさにこのことだ。
『ドゥナス』では、煽情的な熱さ、荒々しさ、静けさと言った砂丘の神秘が、布、光、スクリーンを使った巧みな演出で見事に表現され、その空間を埋めるフラメンコとアラブ音楽の美しい融合に導かれ、まるで別世界にワープしたような気分になる。
パヘスの美しく、かつ力強いフラメンコの動き。彼女の体が正確に刻むするどいリズムは、シェルカウイの内なる魂を刺激し、躍動させる。
動く絵画を思わせるような、想像を掻き立てる壮大なビジュアルで、『ドゥナス』は、単なる舞踊作品を超えた。

東 敬子(フラメンコジャーナリスト)

地方公演あり
[愛知公演]
2018/4/5(木) アートピアホール
お問合せ:中京テレビ事業 052-588-4477(平日10:00〜17:00)
[大阪公演]
2018/4/6(金) 豊中市立文化芸術センター 大ホール
お問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00〜18:00)