日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

マラルメ・プロジェクト――21世紀のヴァーチュアル・シアターのために

http://www.k-pac.org/performance/20100724.html
出演:渡邊守章松浦寿輝 × 坂本龍一・高谷史郎
モデレーター:浅田彰
企画・主催:京都造形芸術大学舞台芸術研究センター
共催:同大学院・同比較藝術学研究センター
日時:2010年7月24日(土) 15:00開演 (14:30開場)
京都芸術劇場 春秋座
チケット:【全席指定】一般1500円 瓜生山学園生 無料(2階・指定席)
瓜生山学園生も要チケット。窓口対応のみ。
チケット発売・予約:【2010年5月25日(火)10:00発売開始】
京都芸術劇場チケットセンター  TEL:075-791-8240(平日10:00〜17:00)
問い合わせ:京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター TEL:075-791-9207

古来、詩は声に出して語られるもの、とくに劇の言葉として公衆の前で語られるものでした。詩が詩人や読者の密室に閉じ込められたのは、近代特有の現象と言うべきでしょう。
ついに日本語版『全集』(筑摩書房)が完結を見た19世紀フランスの詩人ステファヌ・マラルメは、その極北に立つかに見える存在です。難解きわまる彼の詩は、語と語が星と星のようにぶつかり合い反射し合って、星座のように散乱していくというヴィジョンにまで至るでしょう。しかし、実はそのマラルメも劇場への夢を持っていた。きわめて抽象的に見えるその作品には、いわば潜在的(ヴァーチュアル)な劇が含まれていた…。
世界で最も早くそのことを強調した渡邊守章に、「LIFE」で新しいオペラの可能性を探求した坂本龍一と高谷史郎が加わって、そのような19世紀の詩人のヴィジョンを21世紀的な形で顕在化(アクチュアライズ)する、それを通じて新たなパフォーマンスの形を探るというのが、京都造形芸術大学舞台芸術研究センターの「マラルメ・プロジェクト」です。
今回は、マラルメの「エロディアード―舞台」と「半獣神の午後」を主なテクストとして、朗読と音響・映像が立体的に結びついたパフォーマンスを試みます。
マラルメの詩(1876年)にドビュッシーが曲(1892-4年)を寄せた「"半獣神の午後"のための前奏曲」がニジンスキーによってダンス(1912年)の舞台にかけられてから、ほぼ一世紀。半世紀後のブーレーズの実験も踏まえ、それでもなお十分に顕在化されることのなかったマラルメの夢を、新しい形で甦らせるのです。
もちろん、マラルメの後も詩は書かれ続けてきました。今回は、「マラルメ・プロジェクト」の延長上で、現代日本を代表する詩人であり、ありとあらゆる現代詩の実験のあと「吃水都市」(思潮社、2008年)によって圧倒的な「語りの力」を回復してみせた松浦寿輝を招き、その朗読によって現代日本におけるもうひとつの詩の可能性を示します。
マラルメ・プロジェクト」は、完成されたパフォーマンスではなく、実験的なワークショップとして、また同時に、京都造形芸術大学大学院・比較藝術学研究センターの公開講座(Asada Akira Academia)の一環として開催されます。新しい芸術形式の生成過程に立ち会い、それについて考えようと望む、多くの学生・ 市民のみなさんの参加を期待します。


京都造形芸術大学大学院長 浅田彰