日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

新国立劇場 演劇研修所 修了生のためのサポートステージ「西埠頭(Quai Ouest)」

作:ベルナール=マリ・コルテス(Bernard-Mari Coltès)
翻訳:佐伯隆幸
演出:モイーズ・トゥーレ(Moïse Touré)
監修:鵜山仁
出演:世古陽丸、日下由美、北川響、古川龍太、滝香織、サミュエル・フォー、津田真澄小林勝也、窪田壮史、小泉真希、高島玲、二木咲子、宇井晴雄、角野哲郎、西原康彰、三輪冬子

■演出家からのメッセージ
古代ギリシャ人やシェイクスピアのように、ベルナール=マリ・コルテスは私たちを、我々人間の不可能性、希望、そして永続的な失敗に直面させます。コルテスは我々に訴えます。『あなたがたはヒューマニズムやデモクラシーを鼻にかけている。しかしそんなものは失敗だ。あなたがたは獣のように殺し合いながら、ヒューマニティの境地に至ったように思いこんでいる、野蛮人なのだ。』コルテスは物語作者として、私たちにそのことを語りかけています。
なぜ『西埠頭』を日本で上演する意味があるのでしょうか。それは、この作品が「グローバリゼーション」と「人間関係」という二つのテーマを私たちに投げかけているからなのです。今から27年前に書かれた作品でありながら、今の時代を先取りしています。私たちはだれなのか。私たちの経済的、社会的、文化的アイデンティティとは何なのかを問いかける作品なのです。
俳優、空間、光、さらに本作品は、演劇とダンスの出会いでもあります。演劇的手法を最大限に活用しながら、今日における現代性とはなにか、グローバリゼーションにおける演劇の役割は何か、技術が発展し我々の中に入り込んでくるなかで、人から人へ感動を伝えられるのか、という問いを投げかけます。
日本とフランスは似ている国です。それは「アイデンティティ」が大きな意味を持っている。という点においてです。日本とフランスにおいては、歴史的、文化的にアイデンティティは非常に重要な問題なのです。
この作品ではキャリア俳優と若手俳優が組み合わさり、演じます。この二者がともに演じることで、演劇というアートが、さらに“継承(トランスミッション)”という意味合いのある場になります。演劇の根本的意味合いに戻る作品なのです。すばらしい若手俳優三名をオーディションで選びました。さらに七名の俳優も選びました。彼らは、このプロジェクトの“証人”としてクリエーションプロセスに参加してもらう俳優です。ベテランが若手に「教える」のではなく活発に意見を交換していく学びの場、新しい革新的な場をつくり、新しいコラボレーションの形を提示していきます。
フランス政府は従来、完全な作品を各国で上演することでフランス文化を紹介するという文化交流の形をとって来ました。しかしそのやり方に限界を感じたのです。相手国の地に根差した文化交流を、単に上演して変えるのではなく残せるものをという方針に転換したのです。新国立劇場というパートナーを得て、この意欲的プロジェクトが日本で実現できたことを心から嬉しく思っております。