日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

創作能「薔薇の名――長谷寺の牡丹――」

空中庭園第九回公演 クローデルの詩による創作能上演―ポール・クローデル没後50周年記念行事―
作・構成・演出:渡邊守章
節付・作舞:観世榮夫
出演:観世銕之丞/梅若晋矢/茂山逸平/観世榮夫/一噌幸弘(笛)/ 大倉源次郎(小鼓)/亀井広忠(大鼓)/三島 卓(太鼓)
日時:2006年1月15日(日)14時開演
場所: 宝生能楽堂
主催:空中庭園/『繻子の靴』上演委員会
料金:(全席指定) S席:8,000円  A席:6,000円  B席:5,000円  学生:3,000円(当日のみ)
チケット取り扱い:空中庭園  電話 03-5753-0418・ファックス 03-5753-0419
チケットぴあ  電話 0570-02-9999・9988  0570-02-9966 (Pコード 365-833)
お問い合わせ:空中庭園  電話 03-5753-0418・ファックス 03-5753-0419

2005年は、フランスの劇詩人で、大正年間には大使として東京に駐在したポール・ クローデルの没後50周年に当たり様々な行事が催されました。空中庭園では2005年3月に、その記念行事の幕開けとして、クローデルの詩による創作能連続上演を行い、『薔薇の名―長谷寺の牡丹』の 初演と、『内濠十二景 あるいは《二重の影》』の能楽堂ヴァージョンの上演を行い、幸いにも皆様のご好評を得ました。 その間に、クローデルの集大成的戯曲『繻子の靴』の初版全訳が渡邊守章訳・校注で岩波文庫から刊行され、「今年の日本の文学シーンにおける最大の事件」(作家・東大教授松浦寿輝氏の評)として話題となっております。 3月の創作能連続上演の折に再演のご希望の強かった『薔薇の名―長谷寺の牡丹』を、第九回公演として上演いたします。 謂わば『繻子の靴』の余白に書き込まれていく詩人の深層の劇を、音楽劇として舞踊劇として、そして詩劇として、舞台上に読み解いていく企てです。日本の伝統演劇と現代における舞台創造の接点を求める実験の一環です。 『薔薇の名―長谷寺の牡丹』は、 詩人大使の日本滞在を飾る《毛筆自筆に よる日本風短詩》である『百扇帖』の中で、 最も重要な主題系をなす「長谷寺の牡丹」のシリーズを出発点に、「牡丹」の紅に 「薔薇」の記憶を読もうとする謂れを能 に仕組んだものです。 1900年から5年間滞在した中国福州で、 美しい人妻との不倫の恋を体験した詩人の内心の劇が、福州鼓山の湧泉寺(これも長谷寺と同じく観音寺です)の絶壁の草庵を訪れる日本人の詩人に、尼僧の姿をとって現われた、かつての「禁じられた恋」のイゼの霊によって語られます。 イゼは、この事件の破局の後に書いた戯 曲『真昼に分かつ』(1906年)のヒロインの名です。この謎めいた名の背後には、 ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』 が透けて見えるだけではなく、アマテラス神話が重ねられており、「イゼの名」 は伊勢に所縁の名でもあるというのが、 この創作能の作者の解釈です。そして、 モデルとなったポーランド系の美しい人妻の名はロザリー、愛称は「ローザ(薔 薇)」だったのです。 《薔薇の名》をめぐって、詩人の《真昼 時の情念=受苦》と、老境に入った詩人の《瞑想の眼差し》とが、鼓山湧泉寺と初瀬の観音寺(長谷寺)を繋いで、《禁じられた恋》の意味を問います。