日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

青年団日仏演劇交流プロジェクト「われらヒーロー」

作:ジャン=リュック・ラガルス
翻訳:飛幡祐規
演出:フレデリック・フィスバック
演出協力:平田オリザ
演出助手:三浦 基
1999年5月3〜4日(利賀山房)、14〜25日(こまばアゴラ劇場
出演:松田弘子、平田陽子、大井晴彦、角舘玲奈、篠塚祥司、桂憲一、山内健司、佐藤誓、和田江理子、安部聡子、クレア・アヴリーヌ、ジャン=シャルル・デュメ

フレデリック・フィスバックと私の出会いは、昨年7月、私の戯曲『東京ノート』がフランス語に翻訳、出版され、さらにパリ郊外のサン=ドニ市にあるジェラール・フイリップ劇場主催のリーディングが行われた際に、彼がその演出を担当したことにさかのぼります。
私たち二人は、それ以降、幾度となく、お互いが現在なしうる最良の交流は何かということを話し合ってきました。その結果、お互いが、さらに演出家だけではなく、それぞれの劇団の俳優やスタッフも同時に共同作業を行い、交流の継続を図っていく計画を立てました。
『われらヒーロー』は、その交流計画の第一弾となります。昨年11月には、フレデリックが2度目の来日を果たし、オーディションを行い出演俳優を決定しました。
私の方は、6月に渡仏しオーディション、配役決定。そして12月から三ヶ月間、フランスに滞在し、『東京ノート』をフランス人の俳優を使って演出、フランス国内各地の国立演劇センターで上演します。

平田オリザ

『われらヒーロー』は、我々やみなさんがよく知っている「劇場」が舞台になります。ストーリーは単純なものです。ある劇団のメンバーが、公演の後、劇団員の婚約祝いのために集まります。作者のジャン=リュック・ラガルスは、友情や愛情、家族関係などの劇団生活の残酷な面を、あからさまに描いています。
 今回の公演には、舞台美術(エマニュエル・クロリュス)と照明(ダニエル・レヴィ)のスタッフ、及びフランス人俳優二名(クレア・アヴリーヌ、ジャン=シャルル・デュメ)が参加します。二人の俳優は、まるで劇場のしもべのように舞台に出没します。彼らは、「劇場の怪人(幽霊)」であり、ラシーヌ、ジュネ、ジャリ、クローデルなどのフランスの古典演劇のせりふの一節を、幕間に、あるいは劇中でBGMのように語ります。
 多くの基本均な場面では、日本人の俳優たちには、日常均な、「自然主義的」な演技をお願いしています。芝居の冒頭の部分以外は、ふだん着ているような衣裳で登場します。もしかしたら、舞台から婚約祝いのご馳走のにおいがしてくるかもしれません。地名はヨーロッパのものを使いますが、私の気持ちの中では、舞台は現代の日本に設定しています。
 今回の公演で、もっとも重要なのは、平田オリザと私二人の考え――それは日仏それぞれの文化や習慣、またそれぞれの社会における劇場という場で形成されたものですが――が出会ったということです。この企画が生まれ、成立したのは、このような開かれた精神によります。  私は、平田オリザの『東京ノート』や他の著作を読み、彼と演劇について語り合いました。そして、今回のこのすばらしいプロジェクトに出会い、スタッフや俳優の皆さんと一緒に参加できることは、私にとって幸運かつ光栄な経験であると思っています。
フレデリック・フィスバック

(劇場用パンフレットより)