日仏演劇協会 公式ブログ

日仏演劇協会公式ブログ le blog officiel de la Société Franco-Japonaise de Théâtre

劇評「世界観を提示するダンス― シディ・ラルビ・シェルカウイ & ダミアン・ジャレ『バベル BABEL(words)』」(西田留美可)

http://theatrearts.aict-iatc.jp/201409/1971/

シディ・ラルビ・シェルカウイとダミアン・ジャレの振付による『バベル BABEL(words)』が、東急シアターオーブで上演された(8月29〜31日)。この劇場は2012年に開場した客席数約2000を擁するファッショナブルな劇場で、東京でもっとも人が集まる駅の一つの渋谷駅につながっていながら、日常と切り離された異空間が作り出されている。ミュージカルのラインナップが多い劇場なので、ここに決まった時は驚かされたが、地上70メートルというもっとも高い場所(ヒカリエの11階から14階)での上演に違いなく、その意味ではもっともバベルに似合う劇場だったかもしれない。
タイトルは、旧約聖書バベルの塔の物語に由来する。天に届くほどの塔を作ろうとした人間の行為に怒った神が、再び人間同士が共謀しないようにと、元々一つの言葉を使っていた人間に異なる言葉を与えて混乱させたという物語だ。世界中に多くの言葉がある理由を語ると言われている。
この作品には、西洋も中東も東洋もあれば、過去と現在と未来もある。マンガやロボット、TEDで話題を呼んだインド人脳科学者のミラーニューロンの話、ある小説から引用した身振り言語の話、般若心経、和太鼓、イスラム風の音楽、ヨーロッパ中世風の音楽など、多文化由来の音楽が不思議に混ざり合う。それぞれの文化圏で独自に発展した音楽や思想が、この作品の中でかき混ぜられて、大きな野菜がそのままぼこぼこ入った具だくさんのシチューのように、形も素材の味もはっきり残したまま、違和感なく馴染んでハーモニーを響かせている。(西田留美可)
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